独立してから4年経過し、講演のご依頼やメーカーさんとのプロジェクトをいただく機会に恵まれるようになりました。自分の価値観、判断基準で表現できる主体的自由な場を求めて独立したのですが、既存のクライアント企業を大前提としながら、今の環境は大変有難いことであると感謝しております。
さて、ご依頼いただく講演を通じて、どのような内容を述べているか、それは「戸建リノベーションの事業化」この一言に尽きます。なぜ、複数の定期支援先が売上対比0.8~1.5%といった最小限の販促コストで、3億→4億→5億へとリノベーション事業が拡大していくのか、それは建築リテラシーを保有するプロ集団という強みを活かしながら「事業化」の全体設計があり、高い次元で仕組みが構築できていることに他なりません。今回、この事業化をテーマに、各要素をどう強化させていくか下記にまとめたいと思います。
・目的意識の違い
売上目標と同時に事業の目的意識が強いか弱いかは原動力の厳選となる大切な要素です。「目的意識が弱い状態から、自社中心の目的→お客様中心の目的→さらにお客様と社会中心へ」と目的における次元が上がっていくイメージです。やりたいこと、できることに加えて、大義の実現のためにリノベーションがあるという考え方が社内で共有され、根付いている会社はやはり強いエネルギーが生まれています。
・リノベ-ションの認識の違い
まず業界において時々耳にするのが、オシャレリノベ偏重、または性能向上偏重です。特にオシャレリノベに関しては「性能向上に予算を取られると自分たちが追求するデザインが実現できなくなる」といった営業現場の声もあるようです。一方、「とにかく性能だ、とにかく定量データだ」という声も根強いです。「デザイン→性能→デザインと性能の融合」といった大きな流れの中で自社の提供価値を冷徹に見極め、最適解を見出すことが大切です。さらに、WEB、紙媒体、店舗といった各顧客接点で一貫性を持たせたアウトプットができている会社は地域で一定の支持を集めることができます。もちろん「価値/価格」というコストバランスも見据えながら見え方をコントロールしていく必要があります。
・リノベーションの平均受注単価
上記の事業展開の中で、判断の指標にもなるのが、リノベーション事業における平均受注単価です。専門特化や発信に問題がある会社はリノベーション事業の平均単価が500万円以下となるケースも多いようです。戸建リノベ-ションを対象とするなら、「平均単価1000万円→1500万円→2000万円」となり、古民家再生に特化する等のレアケースを除けば2000万円が一つの到達形と言えます。
・リノベーションのモデルハウス
リノベーションのモデルハウスが脚光を浴びています。10年ほど前に全国各地のベンチマーク企業を行脚していた私が知る限り、集客起点として複数のリノベーションモデルハウスを軸に全体設計し事業展開する例は、新潟の夢ハウスさんが先駆けです。夢ハウスさんのリノベーション事業の本質を押さえた取り組みは、業界に大きな一石を投じたのではないかと思います。私が関わったモデルハウス第1号も夢ハウスさんのビジネスパートナー(加盟店)でした。
現在、各地で増えたリノベーションモデルハウスの多くは部分最適の印象を受けます。外部環境、内部環境の全体観を持ち、事業化の1つの顧客接点としてリノベ-ションモデルハウスを位置づけることが肝要です。「自社店舗のみ展開(遅効性)→モデルハウスを開設(即効性)→さらに新たな拠点へ(遅効性+即効性)」と横展開し、認知度アップの面を広げていくというかたちがバージョンアップへの道のりです。
・WEB力
「リノベのコンテンツ不足→施工中ブログ、性能コンテンツなど情報量強化→地域一番の質と量をともなった施工事例ページ」といった到達ステップを描きながら、取り組みます。WEBスクリーニング、ステルスマーケティングの時代において、自社の施工事例の質と圧倒的な量が、信頼の証となり、安定集客へ、さらに到達形として特命受注につながります。
・商品力
商品力の根源的なとらえ方は、冒頭で取り上げた目的が商品、施工に練り込まれているという概念です。商品力の精度を高めるということは、「商品力の意識が弱い状態→商品を意識するが商品説明に終始→理念、哲学が扱う素材や性能、施工品質に至るまで練り込まれている」というステップになります。お客様への伝わり方も理念、哲学にリンクした商品であるべきだと考えています。したがって、前述のモデルハウスもこうした考え方のもと、整合性を持たせることが大切です。
・組織
ここでは、「リノベーション事業の専属がいない組織→専属が存在する組織→専属+分業制が確立した組織」という階段です。やはり、理念、哲学が接客現場から施工現場に至るまで浸透していることが前提です。立ち上げ段階では、会社によって大きく3パターンあります。新しいことに積極的にチャレンジするカルチャーがある組織、新しいことに対して、メリット、デメリットや会社の価値観に合っているか等を慎重に比較検討し取り組む組織、さらに、新しい取り組みに対して、ことごとく反発する組織。3つめの場合は、時間がかかるものの、意見は違って然るべきととらえて、なぜ取り組むのかを相手の立場に立って根気よく伝えていく、自主性に配慮しながら気づかせていくしかないでしょう。
・営業フロー、ツール
「営業フローもツールもない→フローとツールが揃ったが落とし込みが弱い状態→フローが確立されて、ツールもフル活用されている」営業フローに関してはこのような道程です。したがって、ロープレも社内統一されたフローを前提に行われます。「雰囲気が良かった」「やる気が感じられた」という視点も否定しませんが、いかに初回面談ならではの必要な要素が押えられていたか、クロージングならではの項目ができていたかという視点が欠かせません。
以上、戸建リノベーション事業において、リノベーション1.0からリノベーション2.0、さらには3.0へ、この道のりについて述べました。2ヶ月または3ヶ月ごとに鳥の目、虫の目でビジネスモデルチェックしながら、差異となる個別課題とその課題にフィットした具体策、この繰り返しが事業化の精度を高めていき、きっと会社自体の進化につながるはずです。