戸建リノベーション事業の二項対立(チラシかWEBか、一次取得か二次取得狙いか)

 2つの概念に対して、「チラシが正解だ」「WEBが正解だ」という偏った意見になりがちで、バイアスもかかり、客観的判断ができていないことが多いです。

 ここでは、ありがちな二項対立について取り上げます。

・紙媒体かWEBか

 一番多く見られる議論で、リフォーム(リノベーション)業界と新築業界の違い、リノベーション業界でも大商圏か小商圏かの違い、コアターゲットが一次取得者か二次取得者かでも変わってくるので、バイアスにとらわれることなく最適解を導き出すことが大切です。

 「販売促進・広告宣伝で効果的なものは(リフォーム事業者向け)」というリフォーム産業新聞の調査結果では、1位自社ウェブサイトとブログ(63.5%)、2位がイベント・相談会(41.3%)、3位がチラシ(39.7%)となっています。WEBシフトという大きな潮流があるのはご存知の通りですが、リフォーム業界においては現状、メディアミックスが基本であり、自社の適した販促コストの最適配分を常に考えることが肝要です。ちなみに筆者のクライアントでは1社だけ196万人という商圏人口を背景に、WEBのみでリノベーション事業が堅調に推移している例があります(事業年商5億円)。いくつかの要素を満たした上で、当然のことですが、自社サイトが激戦エリアの中で支持されるだけの高いクオリティを備えているということが大前提になります。紙媒体を捨てるなら、前述の要素を正しく検証した上で、高い次元でWEBを展開しなければなりません。チラシのデザインセンスが足りない、またはチラシの内容がターゲットと整合性がない等の状態で「チラシはダメだ」という結論づけも要注意です。前職のコンサルティング会社でも新築はともかく、リフォーム・リノベーション業界(特に地方)においては、Webシフトを前提にしながら、チラシも重視しながら、各人がスキルを磨いていましたが、100%とは言わないまでも、再現性を着実に高めながら、数多くの成功事例を生み出していたことも事実です。

 デジタルかアナログかの議論も同様、代替案も考えることもなく、始めから「どうせ使いこなせないから」と諦めてしまったり、「単なるバズワードだ」と閉ざしてしまったりすれば、可能性を塞いでしまうことになりかねません。どちらか一方ではなく、ペーパーレスから着手し、その後、施工管理での可能性を探るなど優先順位を整理し、取り組んでいただきたいと思います。

一次取得者狙いか、二次取得者狙いか

 リノベーション事業において、これもよく耳にする二項対立です。実際にお互いが「一次取得者狙いだ」「二次取得者狙いだ」とそれぞれの持論を通そうと、結論の出ない議論に終始している場面に遭遇したこともあります。

 このテーマに関しても、やはり商圏人口は大きな判断材料の一つで、小商圏でいずれかに偏ってアウトプットすることは危ういと考えています。そもそも「実家(二世帯)リノベーション」は子世帯と親世帯、つまり二世帯化が含まれるので、双方がターゲットとなります。

 特定の顧客像を設定するペルソナマーケティングを教科書通りとらえると一つだけ設定する意義はあるのですが小商圏では複数ペルソナを設定することも推奨します。

・事例ベースに考えるか事例は関係ないか

 「事例なんて」という声も多いです。一方で「まずは事例だ」とおっしゃる人も多く存在します。これだけビジネス界においてベンチマークという概念が浸透しているのにはやはりその効果を認める人が多いからでしょう。ただ、事例から学ぶということに関しても、押さえておきたいことがあります。

 ポイントとしては、事例の表層だけでなく、その事例(会社)の内部、外部にも目を向けること。理想は1つの事例ではなく複数の事例を研究し、指標や基準を導き出すこと、自社ならではの強みに合致するかという内部環境、商圏人口、競合状況など外部環境もからんでくることを念頭に置く必要があります。つまり、点で見るのではなく、全体で見ること。目に見える部分だけでなく、目に見えにくい部分に、あるいは全体設計(一貫性、整合性)にこそ、成功のカギがあったりします。

 これらを踏まえた事例研究であれば有効な役立つ情報になるでしょう。正しい事例研究であれば、事例自体に正解はないかもしれませんが、ヒントはあるはずです。やるべきことが見えてきたら、即時取り組んでみる→気づきを得る→修正し取り組んでみる、これらを繰り返し、あとは正しいと思えることを根気よく続けることができれば、大抵はうまくいくものです。その結果「あの事例がヒントになった」と初めて語れるようになるでしょう。

 以上、対立構造になるのではなく、フラットな状態で、複眼的に見たり、違った意見に耳を傾けたりしながら、客観的に判断することをおすすめします。

この記事を書いた人

コダリノ