リフォーム市場の構造を把握する→対象を絞り込む→自社の位置取りを決める(戸建・性能向上リノベーション事業参入プロセス)

 今回は、戸建・性能向上リノベーション事業のポジショニングに至るプロセスについて述べたいと思います。

 まず、市場構造を把握、細分化することから始めます(セグメント)。次のどこで事業展開していくのか、対象とする領域を定めます(ターゲティング)。その際のポイントは自社の経営資源、外部環境(市場、競合環境)を考慮します。さらに競合と差別化できる自社の位置取りを考えていきます(ポジショニング)。新築での強みをリノベーションに活かすことが基本です。売れる仕組みに通じるマーケティングミックスを考えるのはこの次のステップになります。

 例えば、住友不動産の新築そっくりさん事業は、「フルリノベーション・フルリフォームの領域に対して、定額制(耐震は標準)で、シニア客をコアターゲットに設定」という構図になっています。さらに、時代の変化に合わせるかたちで、中古を買ってリノベーションを訴求し、一次取得者も意識する、新耐震基準以降も標的に見据えるといった、動きがあります。領域に専門特化しながら、幅広い顧客像を取り込み、1拠点(商圏人口約50万人)で事業年商10億円、年間に全国で7000~8000棟規模で推移しており、当然、定点観測する必要がある代表的な企業です。

 一方、住友林業ホームテック「旧家リフォーム」は、フルリノベーション・フルリフォームを、豊富なオリジナル工法を保有し、旧家(古民家)を対象としています。難解な建物も含まれるため、採用は1級建築士、2級建築士必須(新築そっくりさん事業は「資格者歓迎」)で、組織構成も施工管理に比重を置き、営業担当比率が低くなっている点も特徴です。「旧家リフォーム」の平均単価は2500万~3000万円、全国で年間300棟ほど実績があります。

 こうした先攻企業に対して、ある地域工務店を母体とするリノベーション会社さんは商圏人口が30万人の中、自社の強みを活かせる戸建・性能向上リノベーションの領域に絞り、ロングライフデザインという理念に基づいた付加価値を活かし、対象顧客(ターゲット)は「シニア客」「実家二世帯客」「子育て世代」という3通り設定、ここ数年で集客起点を変化させながら、確固たる独自ポジションを築いています。

 このように、リフォーム業界といっても、数千円から何千万円まで幅広い価格帯があり、市場構造の中でどの領域に、誰を対象に、自社としてのポジショニングをどこに設定するか、というステップを踏むことも全体設計において大切なプロセスになります。さらに「誰が(建築のプロ)」という要素まで押さえて、マーケティングミックスを設計できると理想です。

ターゲットをさらに深く掘り下げるペルソナという概念については、別の機会にお伝えしたいと思います。

この記事を書いた人

コダリノ