多数乱戦のリフォーム業界における競争戦略

先日、業界紙の編集者と情報交換した際に「業界のテーマがワンストップから、益々、専門店になってきている」と述べていたことが強く印象に残っています。今回は、専門店というテーマにおいて、私が最も参考にしている書(論文)「競争の戦略」について投稿したいと思います。

「競争の戦略(マイケル・ポーター著)」の中で著者が述べている3つの戦略のうち、一つ目のコストリーダーシップは、他社の追随を許さないような低価格を達成し、価格を下げることで、一気にシェアを獲得することを意味します。

その他に著者のポーターは、多数乱戦構造に対処する方法として、製品種類や製品セグメントを専門化する、付加価値を高める、顧客のタイプで専門化する、特定地域に集中する等をあげています。製品種類や製品セグメントにおいて、リフォーム業界では、GAISOさんのような塗装リフォーム専門、さらには屋根リフォーム専門、水周りリフォーム専門等、工事区分を専門化して展開するケースは多いです。専門化することで、その分野の専門家として、ノウハウや実績を蓄積でき、優れたイメージにつながり、顧客を獲得しやすくなります。このような特定のリフレッシュ工事の専門店が増えている一方で、LDK改修で専門化する、または住宅の性能向上リフォーム・リノベーションに絞って専門化する例はまだ少ないのが現状です。リフレッシュ工事が老朽化したものを刷新する工事であるのに対して、性能向上リフォーム・リノベーションは、住まいを快適にするもの、家屋を頑丈にするものであり、その動機は全く異なります。ボリュームゾーンではなく、案件の発生頻度は限られますので、企業の成長性は制約されやすいですが、省エネや快適性、地震に備えた補強への意識の高まり、住宅価値への関心度等がさらに高まれば、ビジネスとして成立する可能性が高いです。

また、工事単価20万円以下の価格帯をターゲットにするかたち、逆に工事単価1000万円以上をターゲットにするかたちといった、特定の価格帯を狙った事例も着実に増えています。ただし、狙っていく価格帯によって、集客、営業手法、組織体系など社内の仕組みが変わってくるため、その点に留意しながら、展開していく必要があります。

多数乱戦の状況において、一般的なサービスや工事品質では、同質化してしまい、相見積りの土俵すら上がれない可能性もある中、付加価値を高めることができれば、顧客の支持を集めやすくなります。例えば、断熱や気密性能に対する優れた設計力、高い施工品質、耐震補強における独自のこだわり、優れたデザイン性、インテリア提案等が考えられます。そうした分野は、設計や施工担当者の建築リテラシー、スキル等、人に依存する要素が強いですが、対応できる体制、オペレーションが確立できれば、他社には模倣されにくく、地域において、独自のポジションを築くことができます。

顧客タイプでの専門化については、実家のリノベーションに特化したリフォーム・リノベーション、健康志向の顧客に対するリフォーム、あるいは、建替えかフルリノベーションか迷っているという客層に限定して訴求していく等があげられます。

これらはいずれも、ターゲットが限られるため、特定のターゲットにいかにしてメッセージを届けるか、見学会や勉強会、さらにはYouTubeやインスタグラムといった複数の顧客接点の中でどのような対応していくか、それぞれに整合性、継続性を持たせながら、ビジネスモデルを強固にしていく必要があります。

特定地域に集中するということに関しては、リフォーム業界の特性上、既に取り入られている戦略ですが、工事区分を限定する戦略を取る場合は、商圏が小さすぎたり、絞りすぎたりすることによる市場規模不足が課題です。特定の工事区分や価格帯に特化するのであれば、一定の商圏規模が必要になります。商圏設定に注意しながら、専門化や付加価値を磨いていくこと、そして、それらが機能するように、全体設計していくことが大切です。

この記事を書いた人

コダリノ