「差別化8要素」から、戸建リノベーション事業の顧客ロイヤリティを考える

 「顧客ロイヤリティが企業の競争力になっており、集客や工事単価にも影響を及ぼす」という状況が加速しつつある中、今回は前職で学んだ「差別化8要素」という概念をリノベーション事業に応用しながら、考えていきたいと思います。

※ロイヤリティ=顧客との信頼関係、愛着(直訳は忠誠心)。

<差別化8要素>

・立地:商圏人口、周辺のリノベ需要、店舗前通行車両数

・規模:社員数、売上、店舗の広さ

・ストアロイヤリティ:顧客からの信頼、愛着、歴史、ブランド(顧客ロイヤリティに近い意味)

・商品力:断熱、気密、耐震性能、自然素材等(他社がしていないお客様にとって良いこと)

・販促力:WEB、SNS等情報発信、フォロワー数

・接客力:リアル接客(来店対応、セミナー、施工現場)、オンライン接客

・価格力:商品、販促、接客で補うもの(基本、ここで勝負しない)

・固定客化力(OB客とのつながりやコミュニティ、紹介、クチコミ、メンテナンス)

 上位3つの差別化要素はすぐに変えにくく、4つ目以降の要素は企業努力で強化できると考えられています(売却型モデルハウスは立地及び、敷地、建物規模を重視することで強化可能)。ストアロイヤリティ、ブランド構築は商品力、販促力、接客力を強化しながら築き、販促貢献につながります。

 信頼の源泉となる重要ポイントは価格帯によっても違ってきます。リノベーションの領域は下記の通り、建築知識や施工品質が重要視され、国の調査でも単価が上がれば上がるほど価格より施工品質を重視する比重が増えるというデータがあります。

<リフォーム業界 価格帯別の重要ポイント>

・リノベーション=建築のプロ

・LDK=空間デザイン

・水まわり、外壁塗装=わかりやすい価格、安さ感、親しみやすさ

・リペア=わかりやすい価格、スピード対応

 リノベーション事業を立ち上げ、販促投資しても、単価が上がらない、そもそも案件が増えないというケースがあるのは、単なる認知度では足りず、リノベーションの担い手(建築のプロ)としての信頼が弱いという背景があるからと言えます。「新築事業の性能の高さを性能向上リノベーション事業で」というシンプルな成功事例が多いことも納得いただけるかと思います。逆に高付加価値の住宅を扱っている工務店が、ローコストブランドを立ち上げても必ずしもうまく行かないのは、蓄積された信頼やメイン客層と新たに扱う商品が乖離しており、整合性のある全体設計を築くのが難しいことが大きな要因と考えられます。

 差別化8要素は、モレなく、ダブりなくという観点で疑問視する声もあるようですが、全体設計を考える上で示唆を与えてくれる概念だと思います。会社の理念、哲学が言行一致で一貫して、採用する建材、仕様、技術に練り込まれ、顧客接点、施工現場に至るまで浸透していることで差別化8要素は高い次元で構築されます。自社のストアロイヤリティ、顧客ロイヤリティを全体観で見つめ直すヒントになれば幸いです。

この記事を書いた人

コダリノ