「コトラーのマーケティング4.0」を読んで

<読書メモ>
・本書の大前提は、マーケティングはデジタル経済におけるカスタマー・ジャーニーの質の変化に適応する必要があるということだ。
※カスタマー・ジャーニー=製品やサービスを知った顧客が購入・推奨に至るまでの道筋
・(デジタル・ネイティブ世代は)企業やブランドより、友達や家族のネットワークを信頼している。要するに彼らはきわめて接続性が高いのだ。
※デジタル・ネイティブ世代=物心がつくころからインターネットやパソコンなどが普及していた環境で育った世代。さまざまな機器を使って、いつでもどこでも購買決定を下すことができる。
・やがてはデジタル・ネイティブが多数派になり、接続性がニュー・ノーマル(新しい常態)になるだろう。
・テレビとソーシャル・メディアのような、マーケティング・コミュニケーションにおける伝統的媒体と今日的媒体も、互いに補完し合うようになるだろう。
・接続性の高い世界において、ブランドや企業にとって重要な課題はオンラインとオフラインの要素を統合して総合的な顧客経験をつくり上げることである
・オンラインとオフラインは共存して、優れた顧客経験を提供するという共通の目的のために補完し合うべきものだ。さらに、情報を持っている顧客対注意力散漫な顧客というパラドックスもある。
・女性はホリスティック・ショッパー(全体を観て判断する買い物客)と言える。
・デジタル・マーケティングは伝統的マーケティングにとって代わるべきものではない。この二つのアプローチは、カスタマー・ジャーニーの全行程にわたって、役割を交代しながら共存すべきものだ。企業と顧客の交流の初期段階では、伝統的マーケティングが認知と関心の構築に大きな役割を果たす。交流が進み、顧客が企業とのより緊密な関係を求めるようになると、デジタル・マーケティングの重要性が高まる。
・デジタル・マーケティングは伝統的マーケティングより測定しやすいので、その焦点は結果を出すことにあてられる。それに対し、伝統的マーケティングでは、顧客の交流をスタートさせることに焦点があてられる。
・顧客の生活に関係があり、しかも特定のブランドと強く結びついているコンテンツを作成、配信する一連の活動が必要なのだ。
・ウォルグリーンズ(ドラッグストア)のアプリは、アクティビティ・トラッカー(活動量計)と統合されており、ウォーキング、ランニング、サイクリングなど、健康に良い行動をした顧客に褒美を与えている。
・イケアは、拡張現実アプリと印刷カタログを使って、顧客が、自宅にぴったりおさまる家具を見つけるのが難しいという問題を解決する手助けをしている。家具を置くつもりの場所に印刷カタログを置き、それをアプリの画面で見ることによって、顧客はその家具を自宅に置いたらどうなるかを事前に確認できる。

<所感>
・「マーケティング4.0」は2017年の出版ですが、以前取り上げた「アフターデジタル」の原書のような本でした。
・住宅業界、特にリノベーション業界においては、紙媒体が出会うきっかけ、その後、デジタルという位置づけです(地方ほどその傾向が強い)。=一連の構築を年間売上に対して2%の販促費で実現するのが理想。
・YouTubeも新規集客というより、2度目以降の接点でファン化やブランディングの役割を果たすという認識です。
・「女性はホリスティック・ショッパー」と記されていましたが、リアル含め、インスタ、FB、WEBサイト、YouTube等、複数の質の高い接点を、質だけでなく、常に目立たせている(認知度を高めている)会社が顧客と有意義なつながりを築けると考えています。
・接点を複数つくるだけでなく、一つの接点から、次の接点の動線も重要です(顧客の立場、視点で設計する必要があります)。
・本書の内容はコロナ前から見られた傾向ですが、ここ2年間で進んでいくものがここ2ケ月で一気に加速したと感じています。

Withコロナ、アフターコロナにおいてデジタルは手段であり、結局は真価と進化が問われているのだと改めて気づかされます。知性、社交性、道徳性等人間中心のマーケティングをいかにトレンドに適応し形づけるのかという観点で、全編に渡り学びの多い一冊でした。

この記事を書いた人

コダリノ