「熱意力闘」(潮田健次郎著)を読んで

パナソニックを除く、各住設メーカーの第一四半期の決算売上(前年比)を見ると、

・TOTO=86.8%

・LIXIL=85.4%

・クリナップ=86.3%

・タカラスタンダード=91.0%

となっており、特にLIXILさんは営業損失が26億円と厳しい状況のようです。

納期遅れの問題やショールームを閉館したり、完全予約制にしている期間が長かったのも影響しているのかもしれません。

ある社長から勧められて今回、LIXIL(トステム)創業者の著書「熱意力闘」を読みました。

<読書メモ>

・体が弱く、小学校卒。病床で読書しながら独学。

「人と同じことをしていては、人と同じ結果しか残らない」(父より)

・奉公時代に人の何倍も努力し自分の店を持てた(小5のころからリヤカーに雨戸を積んで配達したり、ガラスを背負って修理に行ったりした)=仕事の基礎(貴重な財産)

・「破廉恥なことだけは絶対にするな」(法に触れること、良心に反すること)

・「人生の最大幸福は職業の道楽化にある。富も、名誉も、美衣美食も職業道楽の愉快さには比すべくもない」(本多静六著「財産告白」より)

・小学校卒の父は学歴が自分より上の人間を使おうとしなかった。だから雇える人材が限られ指示が細かくなる。この点で父は反面教師だった。

・公正で社会に役立つサービスを追求する姿勢に魅力を感じた(米国百貨店経営者の本より)。

・利益を上げるにはまずお客様の利益をつくらなければならないという哲学ができた(同上)。

・アルミサッシが普及すれば木製建具は売れなくなってしまう。最大の危機を好機に変えるには自ら参入するほかない。

・昭和28年に木製建具の生産を始めたが結果はほぼ10年間赤字。同業他社との差異化ができなかったのが要因。同じものだから買いたたかれた。

・何らかの差異化ができず、世の中の多くの中小・零細企業は苦しんでいる。

・サッシ製造の2箇条、「他社のマネをしない」「高性能をセールスポイントにする」

・当社が同じ売り方をしていては絶対に勝てない。戦力集中の大切さに気づいた私は「1点きりもみ桶狭間で行こう」と話した。(物流の集中、住宅用への集中)

・TFCの着想は「GMとともに」(アルフレッド・スローン著)。加盟店に営業手法、在庫管理など経営ノウハウを提供した。

・利益を商品の値下げで還元するだけなら、競合も採算度外視すれば追随できる。TFCや物流改革等当社独自ノウハウで顧客が儲かる仕組みをつくれば追随できない。

・1985年山田日登志氏を招聘。若手がゼロから学び吸収した(生産性向上)

・「本業から離れず時代に合わせて進化させよ」(三菱総合研究所 牧野登氏)⇒定款に「住生活以外の事業は行わない」という主旨の一文を記載した(2004年、統合時)

・当社は中小企業的よさを維持してきた。会社の弱さは自分たちの努力で補う、会社の運命は自分たちでつくる、現場を大切にする、泥臭さと知識技術を両立させる(中小企業的風土を大切にしたい)。

「数字に強い」とは、数字から数字が持っている意味を読み取って、アクションを起こせる人(数字が持つ意味を判断する訓練が必要)。

・「彼を知り、己を知れば、百戦殆(あや)うからず」。彼というのは敵だけではない、お客様や取引先など自社と関係ある、自社の運命に深く関係するすべての事業体と個人を含んでいる。己を知るとは、会社のあらゆる職場の状況を知るということである。

・軍隊で厳しい隊長と優しい隊長がいて、兵隊は厳しい隊長の下についていることを不運と思っていたが、戦闘を終えた後、優しい隊長のほうは沢山の死傷者を出した(厳しい訓練があったほうはほとんど死傷者が出なかった)。優しいということが無責任ということであってはならない。私が社員にしなければならないことは、会社を良くすること。

木の葉は地に落ちて朽ちるが、本源的な森の命は尽きない、企業家もこれに似ている。潮田健次郎は既にいないが、その企業家精神は残って無数のイノベーションがこれからも繰り返されることになると信じている(潮田洋一郎氏の巻末コメント)

<所感>

トステムを創業、1兆円企業にまで育てた潮田健次郎氏の「私の履歴書(2008年3月)」(日経新聞)を新たに構成・編集した本ですが、一企業家の自伝を超えて経営訓・名言がちりばめられていました。

中小企業的風土や差異化、戦力集中に対する強い思いは、あらゆる業界、あらゆるビジネスマンに通じるものがあると感じます。

この記事を書いた人

コダリノ